経済(マイナスの経済)について
パフォーマンス(行為)やコンセプト(概念)を媒体とした様々な作品を展開する橋本聡さんをお招きし、全3回の講座+αを開催します。本講座は、活動に伴う発表や経済、カテゴリーといったインフラを捉えるとともに、そのインフラを転換する新たな活動を探っていきます。各回ともにガイダンス、グループセッション、プラスαの3つの要素で開催されます。予約なしでどなたでも、1回だけでもご参加いただけます。
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Satoshi Hashimoto # 2
〈経済(マイナスの経済)について〉
2025年7月21日(月・祝)17:30 – 20:00 CSLAB(東京造形大学・JR横浜線相原駅よりスクールバス5分または徒歩15分)
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本講座では、膨張する経済とアートの価値システムが共謀する構図を捉え、批判的に検
証し、そしてそれらのシステムを土台としない新たな活動のための「マイナスの経済」
を探求します。
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物々交換を助ける仕組みとして始まった「お金」は、やがて金貸しや仲介、株取引と広
がり、金融経済(カネの経済)を形成しました。金融は当初、実体経済(モノの経済)
の動きを映し出す「鏡」のような存在でした。しかし信用と情報の連鎖が自律的なネッ
トワークを築き、デジタルの波に乗って自己増殖を加速。ついには実体経済の規模を凌
駕し、現実の輪郭をも塗り替えるにまで至っています。
一方、仮想通貨を超える分散性と非中央集権性を備えたアートの価値生成システムは、
鑑賞、批評、メディア、ミュージアム、市場といった多様な要素が「選定・解釈・評
価・権威付け・価格付け」を担い合い、価値を更新し続けます。そのためアートは、非
営利や社会批評の姿勢を示しながらも、最高の投資領域として祭り上げられるのです。
今後、AIが既存の生産物を次々と代替していくなか、アートは作品そのものではなく、
価値生成の仕組みを重視する特異な領域として際立っていきます。ひとつひとつの創造
プロセスが唯一無二となる聖域として、投資家の注目をいっそう集めていくことでしょ
う。
資本主義を批判し、所有を拒む作品を志向してきた戦後のパフォーマンスアートやコン
セプチュアルアートの非実体性も、今では金融経済の拡張に取り込まれているとも言え
ます。しかし、こうした流通の論理の外から観るならば、それらのムーブメントから、
経済そのものへのアンチテーゼ的あり方が浮かび上がってきます。ここでは、それを
「マイナスの経済」と呼びます。
たとえば、売買や所有の対象ではなく、経済そのものへのオルタナティブとして「マイ
ナスの経済」における作品はあります。しかしドルや仮想通貨、不動産や株を追い求め
るような投資の枠組みで扱うかぎり、そのパフォーマンスは現れません。スクラップ&
ビルド(創造と破壊)的な生産性のスパイラルではなく、反創造的かつ反破壊的な解体
の荒野として。バブル的所有と価値の膨張ではなく、反実体的・反所有的な事物の解放
として。本講座では、こうした作品のあり方を手がかりに、「マイナスの経済」を探求
していきます。
(橋本聡)
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# 1:2025. 6/26(木)
*終了→
〈発表(発裏)について_ 私( I )を寝かせ、マイナス(-)に〉
# 3:2025. 9/15(木)
〈未定(不定)について〉(仮)
*詳細は本WEBサイトにて後ほど告知いたします
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参加無料・予約不要
ゲスト:
橋本聡|Satoshi Hashimoto
アナリスト、アナーキスト、アーティスト、アラブ、アクト、アブストラクト。主な展示やイベントに「行けない、来てください」(ARCUS, 茨城, 2010)、「独断と偏見:観客を分けます」(国立新美術館, 東京, 2012)、「偽名」(「14の夕べ」, 東京国立近代美術館, 2012)、「国家、骰子、指示、」(Daiwa Foundation, ロンドン, 2014)、「抽象直接行動198の方法(仮)」(「MOTアニュアル キセイノセイキ」, 東京都現代美術館, 2016)、「全てと他」(LISTE, バーゼル, 2016)、「世界三大丸いもの:太陽、月、目」(青山|目黒, 東京, 2017)、「夜 - 時 = 闇」(Hans & Fritz Contemporary, バルセロナ, 2018)、「暗くなる」(「美しさ、あいまいさ、時と場合に依る」, kudan house, 東京, 2024)など。ほか An Art User Conference などにおいてコレクティブな活動を展開。