CSLAB
REPORT

“(Exhibition-/-Santiago…)”

“(Exhibition-/-Santiago…)”

 

 

task

 

1、       CSLABにサンチアゴ要塞を仮設する(あるいは見立てる)

2、       仮設された(見立てられた)サンチアゴ要塞-CSLABをリサーチし、作品を制作する

3、       展覧会をおこなう

 

 

 

term

 

A,仮設(4月~9月)→森尻 尊、小山 友也

B,制作(9月~3月)→菅谷 奈緒、山本 悠、関 真奈美

C,展示(3月~4月)→森尻 尊、小山 友也、関 真奈美、山本 悠、菅谷 奈緒

 

 

 

statement

 

「あるいは、仮説」

 

昨年10月の末、本展覧会の企画者は、マニラのとあるゲストハウスの寝台上をスペースに設定した。そこでおこなわれたのはサンチアゴ要塞を主会場にした展覧会を構想する(スペースraccoon dogs teakettleの移動形式プロジェクト、carrying space #01内のイヴェント)」という企画行為だった。今回そのイヴェントでの構想を基に作成されたプランを、CSLABで実施する。

 

ある場所に付随する問題を考えるときに、その場所の問題についてだけで思考が収束することは稀である。程度の差はあれども、性質や構造において、ある場所で起きた出来事と似たようなことがどこかで起こっているのではないだろうか。コーヒーカップとドーナッツは同じである、といったように。(その程度こそが物事を特徴づけていることは言うまでもない。しかし程度を推し量ることは時に困難なことでもある。推し量る対象が、数値化しにくいものに関係している出来事の場合、特に。そこに、客観的な事実を求めることはできず、自らの限定的な知識と経験を用いたか弱い想像のみが頼りとなる、といったような困難さ。)

 

ある出来事が起きた場所、現場でその出来事に付随する問題を考えるときには、確かに出来事を想起しやすく、場所のアウラも相まって、問題について思考、直観の「しやすさ」がある。けれどもその弊害も考えなければならない。場所の力や出来事の印象に注意がむいてしまうことで、かえって見落とす視線がある、ということである。現場にいることで(あるいは当事者になる、または当事者に接近することで)、問題の枠組み規定の仕方にバイアスがかかり、他の問題の枠組み規定や自由な発想を無自覚に抑制(もしくは自覚的に排除)している可能性があるのだ。

 

現場にいるからといって事実の全てを知ることはできない。そもそも「事実」は、ある視点、枠組みからみた断片的な情報の総合的な解釈でしかない(事実自体は経験されることがあっても、事実の解釈は常にそれ以後おこなわれる。事実自体は常に過ぎ去っていくものだから)。本物らしい現場だとしてもその場所は(あるいはその場所によって得られる本物らしい知見は)仮構されたものである可能性がある。

 

現場から離れた場所でも出来事について考えることはできる。解釈は不確実なものである。そういった事実に誠実になることで、自由で創造的な解釈をする余地が生まれるのではないか。それは一見拙く、軽くみえるものかもしれない。けれどもそれら「未熟」な解釈の可能性を切り捨てるのではなく、拾い集め、事実/決定を再構築すること。そして一義的な目的ではないにしても、場所に付随する問題について想像性に富んだ示唆、批評、あるいは留保をあたえることに、アートの可能性の一旦があるのではないか。

 

現場や既存の出来事の解釈に重きを置くことが必ずしも良いことだとは言えない。とはいえ、それらを無視することが全ての状況において適当な態度になるとは思えない。現場にいることで考えられることの価値はもちろんあるし、当事者だからこその視点、当事者に接近することでみえるものの意味は大きいはずだ。

 

既存の事実解釈に対しての「軽さ」がひとつのアプローチとして有効であり、特定の文脈に依拠した判断をするとき「面白い」ものだとしても、安易に既存の事実解釈を回避するような判断に基づく行為は、むしろ事実についての想像を貧しいものにしてしまいかねない。そういった態度に基づく企画をするということは、場所についてのアプローチを何もしていないことになる(既存の事実解釈を見知っている時点で、さらっと回避する、というのもひとつのアプローチであることは確かなのだけれども、少なくとも安易な安易さには注意が必要だろう)。

 

今回の展示会場は現場ではない。しかし非現場でもない。現場を仮設する(または見立てる)という手法がほどこされることで、「Cracked」で「Half baked」な場所に変化するのである。

 

“(Exhibition-/-Santiago…)” キュレーター 森尻 尊

 

 

 

project team

 

山本悠:作品制作、アーカイブサイトデザイン

1988年生まれ。 主演ドラマ「悠になりたかった犬」でデビュー。イラストレーション、まんが、絵本などを制作する。

 

菅谷奈緒:作品制作

 

1981年生まれ。2007年女子美術大学大学院修了。近年の主な展覧会に「青森EARTH2014」(青森県立美術館、2014年)、「ホーム/アンド/アウェイ」(アートラボはしもと他、2016年)、ワークショップ「政治的であることについて」(blanclass、2016年)、執筆「pa+」「sa+」(それぞれ2015・2016年刊行)など。最近の興味は労働や人々の政治的指向について。

 

小山友也:会場仮設、コーディネート

2015年3月東京造形大学大学院 修了。主な展示に、“LEAVING ALONE SOMEBODY WHO YOU DON’T GET.” アートセンターオンゴーイング/“鉄道芸術祭vol.5” アートエリアB1/“異種の折り畳み” blanclass/“Unusualness Makes Sense” チェンマイ大学アートセンター/“PARTY” アートセンターオンゴーイング/“6分の1で考える” blanclass/“Politics of Space” statements などがある。また、2015年からステューデントセンタードラーニングを採用している東京造形大学CSLABで、スタッフとして企画運営に携わっている。活動の動機は、コミュニケーションの要素を解体、再構築しながら、既存の枠組みの可視化と侵食によって未来を模索することにある。

 

関真奈美:ロゴデザイン、作品制作

1990年生まれ。2013年武蔵野美術大学彫刻学科卒業。 主な作品に高橋理佳子との共作「boy meets cow」引込線2013 ゼミナール給食センター(2013)、「陳列の眺め」blanClass(2014)、川原卓也との共作「ピンク・ジェリー・ビーンズ」TABLAE(2016)、「乗り物」blanClass(2017)など。 言語とイメージ、物理空間と多次元に代理表象された空間を往来する手続きを鑑賞体験に持ち込む。近作ではプログラムやシステムを人間の言語レベルで応用したパフォーマンス作品などを制作、発表。

 

森尻尊:会場仮設、企画、キュレーション

1988生まれ。日本大学中退。東京造形大学中退、在学中CSLABの運営に関わる。現在、スペースraccoon dogs teakettleを運営。スペースをポケットサイズの箱に移転し持ち歩く”carrying space”、スペースを温泉旅館の寮の一室に移転し、反省文を公募、展示する「はんせいてん」など、各種プロジェクト、イヴェント、展示を企画、実施している。

 

 

object

 

サンチアゴ要塞

フィリピン マニラ、イントラムロス地区北西の一番端に位置している要塞跡。スペイン植民地時代に建設。当時より戦略上最も重要な場所としての役割を果たしていた。第2次世界大戦中、日本軍が占領している間に、多くのフィリピン人が命を失った場所でもある。要塞内にはフィリピン独立の英雄ホセ・リサールが処刑前まで暮らしていたリサール記念館がある。

 

 

organaized

 

raccoon dogs teakettle

スペース。アパートの一室をスペースに設定し活動をはじめた。温泉旅館の寮の部屋や、ポケットサイズの箱、マニラのゲストハウスのベッド上などいくつかの場所に移転し、各種イヴェント、展示などをおこなっている。今年、サハリンに移転する予定。

 

CSLAB

東京造形大学の学食移転に伴い、つくられたスペース。または、そのスペースを自主的に運営する学生の組織。当時の学長の立案をきっかけに発足。「わがままな学び」をテーマに各種イヴェント、ゲストを招いてのワークショップ、ゼミ、展示、学生が主体的に授業をつくる取り組み「知の漂流教室」などをおこなっている。

 

 

 

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