CSLAB
2020 exhibition REPORT

YKC|「セルフィー」展

会期:12/10-12/23(日曜休み、学外の方は要アポイントメント)

トークイベント:12/17(木) 17:00-18:30(CSLABにて)

この度、YKC(Yoko Kuwasawa Contemporary)では「自撮り」の展覧会「セルフィー」展を開催いたします。

「セルフィー(Selfie)」「自撮り」とは、主にスマートフォンのインカメラで自分自身によって撮影されたセルフポートレートであり、SNSでのセルフプロデュース、ユースカルチャーと強く結びついた自分自身に対する眼差しを反映した複合的な図像です。本展ではそんな自分自身に向かう眼差しが反映された図像をYKCの窓から外へ向けて掲示します。

会場に貼ってあるQRコードを読み込むと参加者によるテキストを読むことができます。

参加者:安藤紫恵、イケガミ、楳木歌乃、うらあやか、川上元哉、黒田真由、阪口 智章、白井祥太郎、ス、須永文、知里

d:イケガミ

Text_自撮りおよび自身に関して

知里
改めて確認すると、カメラロールに残っている1番古い自撮りは2015年のものでその時点から少なくとも1年に1回は必ず自撮りしている。2019年頃から自撮りの頻度が増して今月は2、3日に一度くらい自撮りしていた。
初めの動機は思い出せないが1年に1回は完全に記録として写真を撮っていて今もそれは同じ。頻度が変わったのは多少の時間の経過や微妙なむくみ、自然光があるかどうかでも窪みと出っ張りはいつも違う有り様をしていてそれを確認し面白がるという、毎日花に水をやり観察するような気まぐれで発生するルーティンの要素も発生したからです。
写真の像は固定され存在していても写った姿は絶対に正確ではなく、自撮りを続ける事はただ大量にあるものを見比べて時間の経過や現状を把握した気になれるというだけですが、自分の姿を把握する事で得られる満足の類いがあり、鏡や写真以外にも人と話したり運動したり言語と身体で自分の姿は感知できるけども最近は1人で家に居る事が多くなったので自撮りが多くなったのだろうと思っている。

Tomoaki SAKAGUCHI
生活をしていく為にはお金が必要になる。私は現在大学の学部三年生であるが、就職先も特に決まっていない為、将来に対する漠然とした不安を抱えている。その不安の要因にお金の存在がある。しかし現在、そういった不安感は私のような立場の人間だけが抱えるような問題ではないように思う。コロナウィルスの影響によって職を失ってしまった人々、共働きをすることが基本的なスタイルとなってきており、子供を生む事を躊躇してしまうような状況、もしくはこうした状況の中で子供を抱えている人々など、日本で生活する多くの人間がお金に対する不安感を抱えているのではないかと思った。この一万円札を全身に纏ったセルフポートレートの作品は、そういった不安感に私なりに対抗していく為の鎧であり、そして同時にお金というものに捉われてしまう自身の姿でもある。
IKEGAMI
1.自分の身体をきちんと愛するということ
自分の身体が自分のものとして満足していてくれるように
弛まぬ努力の結果なのよ 私が泣いてるのなんて知らないでしょ

2.節度のないあなたのカノジョ 私は顔も知らないけど代わりに泣いておいてあげるわ
カノジョはカノジョだからね あなた「の」じゃないからね

3.私の大好きな人たちのおかげで私は今とてもしあわせで驚いているよ

でっかい愛を込めて
(句読点がニガテなので読みづらいけどいい感じに間を置いて読んでほしい)

Kano UMEKI
私が自撮りで耳にした理由は、この耳の形とピアスが私を象徴しているからです。自撮りと聞くと、自分の顔をイメージしたけど、私の自撮りを出す勇気がなくて諦めました、、、。(自撮りを出さなければいけないというわけではない)大学に入ってから初めて会った人にだいたいピアスすごいねと言われて、固定概念というか、私=ピアスというイメージが自分の中で勝手に出来ました。そもそもなぜ、沢山ピアスをあけたかというと私が受験生の時に塾にいた講師の人が沢山ピアスをあけていて、その時のインパクトが強すぎて影響されました。あと、護身用と意味もあります。私は、気軽に話かけられたいという気持ちと話しかけられても舐められた態度をとられたくないという謎の感情があるからです。可愛くいたいけど、舐めたれたくないっていう気持ちが私の耳に込められている気がします。最後にこの耳のピアスはもうできないデザインになっています。今私は、拡張をしていて、何個かピアスの穴を塞げているのでこの耳はもう戻ることはできない、貴重な写真になっています。
Ayaka URA
写真加工で顎を削るために歪み圧縮された、空間であった部分。例えば絵画の中にのみ存在する光を思考することを頼りに、写真に発生した圧縮空間に目を向けてみよう。顎を削ることで現れたブラックホール。写真の中にある空間と人体らしき図像のせめぎ合いによって、人の姿が画面に現れる。例えば、セザンヌみたいな地と図の(そして同時代のある一定の年齢層に共有された「美しさ」に基づいたその域値の)せめぎ合い。撮影され像となった身体には地も図もない。こと自撮りにおいては空間を身体に巻き込んで自撮りの顔の加工にはそういうことがまじ普通に起こってる。すごい繊細な作業。美しさと気色の悪さの間にある、顔の造形に関わる集合知としての「かわいい」と、それを学習するAI。

それはそうと、自撮りをメンヘラとか思ったり、女の写真とあればエロさを判断したりする呪いがはよとけるといーよねえ。

Shie ANDO
私が1人、暗闇の中何かの奥で笑っています。
私以外の人が見たこの写真は、どのように写って見えているのでしょうか。またどのような感情を抱くのでしょうか。
多くの人は、不気味と感じるでしょう。
実際、夜の暗闇の中、1人ではしゃぎながらその様子を撮っている様子は異常です。
ですが、その様子を撮っている私とその周りの風景は別の世界として正常に存在しています。
見る手側と私、その世界のギャップについて考え、撮影しました。

Aya SUNAGA
高校生ぐらいまで左頬にあるホクロがどうしようもなく嫌だった、髪の毛で隠したり、大人になったら除去しようと思っていた。
しかしそれもいつのまにか気にならなくなった。
今のコンプレックスは内面のこと。自分が満足に努力できていない、今の私にしてみればものを生み出せていないことが、自分の自信をもなくしコンプレックスとなっている。

Shotaro SHIRAI
タール漬け猫が正式に家族になり、三週間ほど経った頃のポートレート。 偶然の一枚ではありますが猫と私と天井の隅などが面白い構図だと思います。 私はしばしば、人物と猫をモチーフに作品を制作しているのです。 このポートレートも数ある中の一枚で、私自身もそれなりに気に入っています。 猫と自分の信頼関係を感じて頂ければ良いと思います。
Mayu KURODA
この写真は、希望に満ちた目である。
または、決意が表れた目。
私は、高校生時代から美大生に憧れていた。
しかし、新型コロナウイルスで前期は大学に行けず、
退屈と不安、絶望に溢れる毎日を過ごしていた。
後期から対面授業が始まり、
退屈な日常から抜け出すことができた。
「美大生ってこんなに楽しいんだ!」と、登校初日は感激した。
また、やっと大学の人たちにも会えたので尚更だった。
期待と希望に溢れる日常に変わったのである。
その、前向きな現在の私を収めたかった。

私は自撮りをめっちゃたくさん撮る人だ。

自撮りは私が私を観察することで私が一番知ってる私の姿である。他人が撮ってくれた写真はなぜか少し固まって自分じゃないように感じる時もある。私は目が可愛いのに小さく撮れたとかここがコンプレックスなのに目立つとか、私の可愛いところは私が一番知ってると思う。そして自撮りは撮る人がそもそも自分だから、一番自由で楽な気持ちの私が撮れる。私は私に撮影を任せる時が一番楽だ。

私は鏡を見るより自撮りを撮ることが多いかもしれない。

自分が好きな自分の姿を自撮りで残っておくのは自分の観察日記であり、過去の自分を見て可愛いなと思う為の行為だ。

Motoya KAWAKAMI
「後ろ向いてるね」
「後ろ? そうですかね?」
「うん。それと、敬語じゃなくていいよ」
「いやいやいや。…あの、後ろじゃなくて恐らく横を向いてますね。この時のことそんなに憶えてないけど、写真からすると」
「そうなんだ。テカリ具合からして後ろ向いてるのかなって思ったんだ」
「なるほど」
「後ろ向いてるように見えるんだけどな」
「今思ったんですけど」
「うん」
「あんまり相手の言ってることを理解できてないのに『なるほど』って言ってしまう時が私にはありまして」
「あ〜。今言ったのもそんな感じの…」
「はい。『なるほど』って同意を示せる便利な言葉で、その便利さにかまけてとりあえずわかったふりをして、ただただ相手の言ってることに同意してることだけを示すっていう、良くない…同意のみがポッカリ浮かんでるような使い方ができてしまう言葉じゃないですか」
「知ったかぶりみたいな」
「う〜ん… それもそうですけど… で、そういう、なんだろうな…理解できないことに直面して、理解できてないにもかかわらず言う『なるほど』って今言っていたのとはちょっと違うタイプの、異なる『なるほど』がある気がしてて」
「んん?」
「え〜っと…例えば、部屋を模様替えしたとして。家具なり、カーペットの配置を変えたとして」
「ふむ」
「一通り終わった後、模様替えする前と後とで、なんというか、何かしら、部屋の様子とかが良くなったのかがいまいちわからない。その時、とりあえず『なるほど』って言いますよね」 「言わないよ(笑)」
「え、そうですか!?」
「それ、模様替え失敗してるんじゃないの」
「いや、明らかに失敗してるみたいな感じじゃなくて…」
「良くなったかがわからないんでしょ?或いはさ、失敗してるっていうか、まだ模様替えの途中ってことなんじゃない」
「いや、途中でもなくて、模様替えの作業自体はもう終わった感じがするんですよ」
「知らないよ〜」
「例えを変えましょう。散髪したとします」
「うまく想像できないけど…うん」
「散髪し終えて…あ、私はいつも髪切ってもらった後に適当な場所で自撮りするんですけど」
「へぇ。髪とか切るんだね」
「切りますよ。で、自撮りするのは自分が散髪しに行く周期みたいなのを把握するために記録しておくっていう目的もあるんですけど、まぁ、なんというか…新しい髪型ぶっちゃけどんななん?イケてるんか?っていうの確かめたいっていうのもやっぱあって」
「まぁ、散髪した日から暫くしてちょうどいい感じの髪型になるように切るらしいけどね。知らないけど」
「詳しいじゃないですか。まぁ、その上で、やっぱり確かめたいじゃないですか」
「うん」
「で、自撮りして、その写真見た時『なるほどね〜』とか言うんですよ」
「あ〜、なるほどね」
「いや なるほどて。…まぁその、つまり、さっきの模様替えし終えた部屋の例えで言うと、部屋が良くなったかどうかはそれなりに短くない時間をその部屋で過ごさないと判断できないんじゃないかと思ってまして。時間を掛けないとわからない。さらに、その部屋で過ごしていくにつれて時間が流れていって、信じられないくらい微かに、自分が微妙に変わっていて」
「ん?」
「模様替えした少し後、或いはずっと後になって微妙に変わった自分が部屋について何か思ったり思わなかったりする。それを見越してる訳ではないけど、とりあえず『なるほど』って言って、その、大げさに言うとある程度の時間の流れに向かって判断や理解を託すんです。保留するっていうとわかりやすいけど、保留とも違うんですよね」
「う〜ん…よくわからないな」
「ちょっと自分でも何言ってるかわからなくなってしまいましたね…あ、例えば、漬物を作るとして」
「例え話はもういいよ〜」
「すんません。…なんかさっきから明らかに目に見える変化を伴った例えしか出してないんですけど、なんつうか、もっとささやかなものでも良くて」
「まぁそれは置いといて。さっきの散髪の後の自撮りの話してる時、『なるほど』って言ったけどさ、話の流れとか意識せずに普通にスッと言ったんだよね」
「言ってましたね」
「それで思ったのは…こっちも例え話になっちゃうんだけど(笑)新しいボードゲームを買ったとしてさ、アイテムとかマップ、カードとかのデザイン…ゲームをする上での機能的なデザインとか、雰囲気とか見たりして。その時ゲームのルールを把握してないにも関わらず『なるほど』って言うなぁって思って」
「部屋の模様替えと同じじゃないですか」
「いや、違うでしょ。で、ボードゲームしていく上で段々ルールを理解し出した時、本来の意味でのなるほどを言うんだよね。ゲームのルールを、プレイする中で理解できましたっていう。理解する事に追いつく。最初のそしてその時になって、本来の意味での『なるほど』を言うことができる」
「あ、だから、時間を噛ませる必要があるんですよ。それぞれ時間の長さは異なっていて、ボードゲームの場合はプレイする時間、模様替えは部屋で過ごす時間。自撮りは、何だろうな…写真として残るから後から見ることができるんだけど…」
「それぞれの例え話が微妙に噛み合ってないんだけど、恐らく共通してるのは、理解してないけど『なるほど』って言った時点で何かしらを認めてるようなことが起きてることかもしれない」 「…自撮りして、それ見て…『認めます。』みたいな?」
「…ちょっと大げさかも。認めるはちょっと違うな。そのさ、さっきまでの例えで言うと明らかにつまんなそうなボードゲームとか、模様替えがうまくいってない部屋には『なるほど』って言わないじゃん。ふざけて言うかもしれないけど。だから、その時点では理解はしてないけど、いやある種理解できてるのかもしれないけど、自分にとってまだ謎で、わからないけどとりあえず置いといておきましょう、でも、良いですねっていう」
「良いですね…ってなるし、良いですねの手前で留めておくこともできる」
「良いんじゃんって」
「…なるほどについて話し込んじゃいましたね。なんでこの話題になったんだろう?」
「確か なるほどって君が言ってさ、それで…」
「ああ、そうだ。後ろ向いてるとか訳わかんないことをあなたが言い出したから」
「いや、後ろ向いてるでしょ!」
「向いてないですよ。どう見ても、横ですよ、横」
「テカってんじゃん!」
「いや、それも意味不明ですから!」


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