antagonism「敵対/対話/共存」の町ベルリンに生きる日本人アーティストの話を聴く会
LIVING IN BERLIN AS A STUDENT | AN ARTIST | A CITIZEN
近藤 愛助(アーティスト・在ドイツ)
森岡 祥倫(デザイン学科教員)
2015年1月15日(木)
18:00‐20:00
東京造形大学 CS Lab
近代の亡霊が、プルーラリズム(価値の複数性/相対性)と他者の関与なき自己決着を声高にし、情報資本の循環回路と文化の再生産空間を跋扈するこの時代にあって、世界と対峙し世界に包含される人間の悟性にかかわる生の営為としてのartは、しかし、どのような表象を顕現させようと、作品の背景に向けたspectator / observerの「観照 Kontemplation」がもはや不可能であることを、美学的なシニシズムではなく己自身の倫理的陥穽ないし予め破綻した他我問題として受けとめざるをえません。
とはいえ、みずから望もうが望むまいがartistという名のもとにこの社会に布置される彼・彼女が、もしそこからの完全な失位を本意としないのならば、観照の不可能性それじたいをむしろ主体的に生きることで、artと「artにとっての他者」とのあいだの不和・不寛容・不承を支配する膠着的なヘゲモニーを、何らかの新しい政治性によって民主的に再構築しなくてはならないでしょう。
予定調和的な関係調整ではない、そうした他者や異者との直截で摩擦感のある拮抗関係(アンタゴニズム)からスタートする根源的民主主義の探索が、今日、世界のアート・シーンでおそらく最も先鋭的に意識され遂行されている地域こそはドイツです。ただしそれは、ISへの直接攻撃を決定した、中東からの移民受け入れに揺れる、核廃棄物の永久処分場が決まらない、そして世界第3位の武器輸出国としてのドイツであって、バウハウスの、ドクメンタの、エコロジー大国の、優等生の顔つきをしたドイツではありません。
このささやかな集いでは、そうした国民国家の首都で現代美術を学び、外国人労働者として働き、市民として家庭を成し、そして制作活動を続ける1人の日本人アーティストを招き、出自した日本とは大きく異なる文化・政治・経済環境のなかで、ベルリンという古くからの高踏的な自治意識と現代の多元的な価値観が縦横に交差する都市のテクストを、どのように自身の画布の像と照応させようとしているのかを問うてみたいと思います。さらには、ドイツの美術大学の様子、アート・マーケットの実態。コミュニティ形成の問題等々、今後にドイツやEU各国への留学・転地を考える人にとっても参考となる具体的な情報や知見を披露していただこうと考えています。(森岡 祥倫)
近藤 愛助(こんどう あいすけ)
1980年 静岡生まれ 2001年 Bゼミスクーリングシステム修了後ドイツに渡り、ベルリン芸術大学 Universitât der Künste Berlinに入学。イケムラ・レイ教授の指導の元、2008年マイスターシューラ―を取得。以降ベルリンに在住し、同地を中心にケルン、ハンブルク、イスマニング、東京、横浜などで写真、ペインティング、パフォーマンスの発表を行う。
今回はCCC 静岡(静岡市クリエーター支援センター)において、戦中のアメリカで収容所経験をもつ曽祖父の記憶をめぐる作品『Reconstruction of Memories / 記憶の再構築』の発表のため一時帰国。
CCC展覧会企画公募 NCC 2015 第7回 入賞展覧会企画 『converters』[リンク:http://www.c-c-c.or.jp/2014/ncc15-01.html]
会期: 1月13日(火)~2月14日(土)