ガンディーの経済学
CS-LABの試運用、良い感じですね!これからが楽しみです。
以下は松岡正剛氏のウェブサイト「千夜千冊」からジット・K・ダースグプタ著「ガンディーの経済学」に関する書評からの引用です。
教育という英語は、語源的には「引き出す」(drawing out)という意味をもっている。インド語のひとつグジャラティ語の「ケラヴァーニ」もまったく同じ意味をもつらしい。
ガンディーはこの話を引きながら、自分にとっての教育は「開くこと」であり、「そこに引きずり出すこと」であると言った。そのためには、「知性」と「身体」と「精神」とが同時に絡み合って引きずり出されるような教育が必要だと考えた。これはガンディーが生涯にわたって帰依したヒンドゥ教の教えとも合致していた。
こうしてガンディーの「ナイー・タリム」(新しい教育)が構想されていったのだ。学校児童に向けてのプログラムだった。
その原則がきわめて明確だった。第1に、すべての児童教育は「母語」によること、第2に読み書きそろばんが職業性につながること、第3に教育システムが経済的に自立しうること。この3つを前提の方針にした。
もっと画期的なのは、そもそも子供のためのシラバス自体が手仕事的な仕掛けで説明されているべきだとしたところだ。ガンディーは自分でもワルダーで子供のための学校をつくっていたが、そこではまさに、糸紡ぎ、手織り、大工仕事、園芸、動物の世話が先頭を走り、それらによって自分たちがこれから学ぶことの“意味”を知り、そのうえで音楽、製図、算数、公民意識、歴史の勉強、地理の自覚、科学への冒険が始まるようになっていた。
なかでも、文字を習い始める時期を延期したことに、ガンディーの深い洞察があるように思われる。あまりに文字を最初に教えようとすると、子供たちの知的成長の自発性が損なわれるというのだ。ガンディーは自信をもってこう書いている、「文字は、子供が小麦と籾殻とを区別することをおぼえ、自分で味覚をいくぶん発達させてからのほうが、ずっとよく教えられるのです」。